sideB:告白



 好きより上って何かな、と呟いた僕に君は、分からない、と小さくこたえた。
 分からないわけないだろう?これほどありふれた言葉なのに、と思ったけれど、君が俯いてしまったから、僕は黙って抱きしめていた。
 ふわふわしたセータの向こうに、君の温度が腕に伝わって、僕はようやくほんの少し安心する。

 冬はいい。寒がりな君を、暖めるという口実があるから。
 僕は君を抱きしめている。
 消えてなくなってしまわないように。

 本当に、君がいなくなってしまったら、僕はどうしてしまうのだろう。
 想像できなくて、怖くなって目を閉じた。
 いつだって、未来は不確かなのに。
 可能性は0ではないのに。
 僕は、ありえなくはない未来が、存在する事に怯えている。
 そんなあてのない不安が、僕をゆるゆると取り巻いている。
 初めてなんだ。
 こんなに。甘く甘く幸せな日々は。
 甘く幸せで寄る辺ない日々。

 好きなところもその訳も、もう僕には分からない。
 君がいなかった日々はすぐそこなのに、何をしていたか分からないんだ。
 例えば去年の今頃僕は、一人で何をしていただろう。
 君がいなくて、僕は、君の手の冷たさも知らないで、僕は、きっと。
 ただ呆然と生きていたのかな。
 毎日を。
 淡々と巡るように。

 僕はもう戻れない。
 この極彩色の平凡な日常を
 君がひろげて見せたから。
 僕はもうあのモノクロな日々には
 どうしたって戻れないんだ。
 君が見せた鮮やかな景色を
 僕は決して忘れられない。
 未来はままならなくても
 可能性を否定できなくても。

 背中まで落ちた君の綺麗な髪に紛らすように。
 あいしているよと呟いた。
 生まれて初めてのその言葉が
 例え君に届かなくても。
 例え君が認めなくても。
 僕だけは目をそらすまい。





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