切々



 伝わらない、という事が、こんなに哀しいことだなんて。
 僕は知らなかった。別に知らなくてもよかったのだけれど。


 僕たちは確かに、互いをちゃんと引き合っていて、雑妙なバランスで安定していて。
 僕たちは確かに、お互いが必要で、一方通行じゃない事に、溜息に近い安堵を覚える。
 僕たちは確かに、長い長い迷走の果ての、一つの答えを探し出した。
 あり得ないと諦めかけた、奇跡に近い選択肢の一つ。

 それなのにいまだ何の確定もないということが
 はがゆくてならない。
 もういいじゃないか。
 もう、僕は。
 迷子になんて、なりたくないんだ。
 君を追いかけて、君を探して
 長くて淋しい日々を
 一人彷徨いたくなんてないんだ。
 どうして君には。
 どうしていつも。
 伝わらないのだろう。
 僕たちはすれ違い続けて、長い長い時間をかけて、やっとここまで近くに来たのに。
 今、声が聞こえる、手が届く、この距離を。
 僕は全力で守るのに。

 いつの日か。
 君は行ってしまうだろう。
 君は守ろうとはしないだろう。
 君の視線の先は遠く
 君の未来は白く白く
 
 いつだって、駆け抜けていく君の事を、僕は眩しく思いながらも。
 君はきっと、一緒に行こうと誘うけれど。

 君の光を愛しているのに。
 僕は閉じ込めてしまいたい。
 君が走れなくなったら
 僕が君を守れるだろうか。


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