白昼夢



呆れるほど哀しい君の眼が、はらりと翻って妙に光った。冷たい風が髪を揺らして、窮屈そうにポケットを探った。
何も見たくないような、平らかな視線が遠くに逃げて。
届かない、と思った。
どうにも、君には、どうしたって届かない。

ベルが鳴って、ガラスの向こうの君が少し傾ぐ。走り出すスピードを止められる訳もなくて、ただ突っ立って見送っていた。

また逢える日は来るのだろうか?

君は手を振ることもなくて、でも真っ直ぐな視線は僕を刺し、酷く責められている気がしていた。つい怯んだ僕が目を逸らしたのはほん一瞬だったけど、窓越しの君はもういなかった。

失う事は本当に簡単だ。決して元に戻らないものほど、まるで罠か何かのように。さり気なく穏やかに消えて行く。

僕にはそれを止める力などあるのだろうか?

誰もいなくなったホームは静かで、どこにも繋がってないような気がした。
僕は独りで、今までもこれからも、どこまでも独りのような気がした。
階段を上れば、本当にそこは見知った街だろうか?

僕はぼんやりと佇んでいる。現実など、永遠にこなくても構わない。


photo by Survive   


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