君のため (vol.1)



 クリスマスプレゼント何がいい?と言う質問をはぐらかされ続けて、年末の忙しさも手伝って、クリスマスはあっさりと過ぎてしまった。イブは双方バイトや予定が立て込んでいて合えなかったし、25日も合間を縫ってちょっとあって食事しただけで別れてしまった。
 お互い割と忙しい日々だし、別にクリスマスだからなんだと思わなくもない。ないけれども。
 何か彼女に上げたかった。何でもいいから何か。残るものがいい。目にして僕のことを思い出すようなものがいい。

 それにしても、イベント意識の薄い人だと思う。女の子ってのはこう、もっと記念日とか行事みたいなものに敏感なものなんじゃないのか?
 付き合って結構経つけれども、互いの誕生日も去年もクリスマスもバレンタインも、ただの一日とさして変りがなかった。バレンタインには一応チョコレートを貰ったし、誕生日にはおめでとうと言い合ったりはしたけれどそれだけだ。
 友達は楽でいいじゃんとか言うけれど、俺としてはもうちょっと何かあってもいいと思う。余りにあっさりしすぎていて落ち着かない。なんだってあんなに拘らないのかは分からないけれど、付き合った日とか、俺の誕生日とか、あっさりと忘れられていそうで不安になってしまう。

 去年のクリスマスだって凄く大変だった。特に何も言ってくれないので、試しにペアリングにしようかと言ってみたら、恥ずかしいから死んでもいやだと全否定された。じゃぁ何でもいいから一番欲しいものと言って何とか聞き出した答えは、ホットプレートだった。
 独り暮らしの彼女は、鍋もできる深めのホットプレートを買おうか買うまいか迷っていたらしい。僕ははっきり言ってあっけに取られたし、彼女は彼女で気まずそうだし、それに何でもいいと言ってしまった手前ひくに引けなくなって、僕は彼女に多機能型ホットプレートをプレゼントした。

 そのホットプレートは今年の冬も大活躍している。彼女の部屋で暖かい鍋を二人でつつけるようになったのは確かに大変喜ばしい。喜ばしいけれども。僕は鍋のたびに複雑な気分になってしまう。

 だいたいにして、彼女は普段から要求と言うものがひどく少ない。何かを買ってくれとせがまれた事もないし、連れてってほしいと言われた事もない。食事だっていつも割り勘だし、今すぐ会いに来てと言われたこともない。
 どうやら友人の中には、彼女の過度の要求に苦しんでいる奴もいて、お前はほんとに楽でいいなと言われたりする。確かに楽だけれど…もうちょっと何か要求されてもいい。本当に、俺なんてどうでもいい存在なんじゃないかと思わないで済む程度には。

「俺が女々しいのかなぁ…あいつが勇ましいのかなぁ…」

 ぼんやり考えているうちに、彼女は颯爽と実家に帰省してしまった。正月には親戚一同で餅をつくから帰らないわけには行かないと言う。もともと実家通いの俺は、いつもと変らずに家のこたつに潜り込んで溜息をつく。

 いつになったら戻ってくるんだろう。
 年明けにはバイト代も入るし、そうしたらやっぱり彼女に何かプレゼントしよう。
 何がいいか聞いてもどうせ言わないだろうしなぁ…むしろいらないって言うだろうしなぁ…
 気付けば彼女のことばかり考えている俺はやっぱり、ちょっと女々しいのだろうか。


「なぁ。いつ戻ってくるの?」
「えーと。決めてない」
「餅はついた?」
「ついたよ」
「じゃあさぁ、早く戻ってきなよ」
「うーん。いいけど」

 年明け早々に電話してしまった俺は、我ながらちょっと女々しい。



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