春休み (vol.1)



 一昨日、高校生が終わった。だからなんだ、という話だけれど。
 物事の終わりというものはかくもあっさりしたものだろうか?
 それとも僕が鈍いのだろうか。よく分からない。

   ☆

 入試が終わって発表を待って、ほっとしたらもう卒業式だった。
 飛ぶように過ぎた3年最後の三学期は、高校に顔を出す暇もあんまりなくて、ひどく短かった。
 卒業式はただただあっさりとしていた。合格も不合格も同じくらいいるクラスの打ち上げは、妙に湿っぽかったり荒んでいたり浮き足立ったりしていて微妙だった。
 僕はといえば、感傷に浸る間もなくひどく気が抜けてしまってぼんやりとしていて、要するに、意外と楽しくなかった。
 
 受験が終わったら、あれやこれやとしたいことも行きたいところも沢山あったはずなのに、何故かすっかりその気はなくなっていた。どちらかというと、面倒。
 というわけで、僕はひたすら、削り続けた睡眠を取り返している。



 充分に眠って遅く起きた朝にぼんやりしながら階段を下りていくと、玄関で兄貴を見かけた。生活リズムが違うので、結構久しぶりに会ったような気がする。
 何故か大きめな鞄を抱えていて、いつもより少し身構えた服装をしていた。

「なに。どっかいくの?」
「あー。まぁちょっと」
「旅行?」
「まぁ、そんなもんかな」

 振り向いた兄貴は一瞬妙に気まずそうな顔をして、まじまじと僕を見た。なんだろう。そっと抜け出したかったんだろうか。
 わけも分からないままぼんやりと見返していると、兄貴はふと我に帰って時間を確かめて、それから慌てたように靴を履いた。

「じゃーな」
「おー」

 兄貴が背中を向けたまま肩越しに手を上げたので、つられてひらひらとふりかえした。そのまま扉を押し開けて早足で出て行く。
 右肩に担いだバックが一瞬、閃くように太陽の光を照り返した。外の天気はいいらしい。
 そんなことを考えながら、そのまま扉が閉まって兄貴の背中が見えなくなるまで、何となくぼんやりと見送ってしまった。
 まだ、幾分寝ぼけていたのかも知れない。





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photo by Survive   


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